会長ごあいさつ                  吉田 浩己

 

 

平成27年6月より、会長を務めております吉田です。全世界のひとびとが世界の恒久平和を希求し叡智を集めて作り上げたユネスコの活動について紹介いたします。

 

 

 

Ⅰ ユネスコの平和の理念について
 

  
 1. ユネスコとは、国際連合教育科学文化機関のことであります。英語の頭文字をつないでユネスコと呼ばれております。ユネスコは教育、科学および文化の分野での国際協力を進めることにより、諸国民の間に知的・精神的連帯を強め、真に永続的な世界平和を実現することを目指しています。
 ユネスコと聞けば、ユネスコの世界遺産活動を思い浮か ばれること思います。多様な世界遺産を学ぶことで、世界には素晴らしい様々な異なる考え方や文化・風俗・風土・自然が存在することを認識することができ、世界の人たちの相互理解を深めるきっかけとなります。ユネスコはこのような観点からも、1972年より、この世界遺産活動を取り組んでおります。

 

 2. ユネスコの誕生の最大の要因は第二次世界大戦であります。未曾有の大戦争がもたらした無数の犠牲と悲劇は、多くの人々の心に深い影を落としました。その中で、二度と戦争を起こさないと平和を願う各国代表がロンドンに集まり、「戦争はなぜおこったのか」「世界平和は実現できるか」真剣に検討しされました。 大戦末期の8月6日と8月9日に広島と長崎に原子爆弾が投下されことは、核兵器の恐ろしさを自覚させる重大な契機になり、新しく生まれようとしていた国連機関にさらに、科学(Science)を加わることになり、ユネスコとなったのであります。

 

 3. 合意された理念を1945年の11月にユネスコ憲章としてまとめ、1946年11月の各国の批准によりこの憲章は効力を発し、ユネスコが誕生いたしました。

 

 

 4.ユネスコ憲章では、戦争の原因を次のように分析しています。
 
「相互の風習と生活を知らないことは、人類の歴史をつうじて世界の諸人民の間に疑惑と不信をおこした共通の原因であり、この疑惑と不信のために、諸人民の不一致があまりにもしばしば戦争となった。」

「言語に絶する悲哀を人類に与えた第二次世界大戦は、人間の尊厳、平等、相互の尊重という民主主義の原理を否認し、これらの原理の代わりに、無知と偏見を通じて人間と人種の不平等という教義をひろめることによって可能になった戦争であった」と明記しています。すなわち、相互を知らないことによる「疑惑と不信」が戦争を起こしてきたのでると分析しています。

 

 このことを踏まえて、ユネスコ憲章の前文の冒頭で、
「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に『平和のとりで』を築かなければならない。」と宣言しています。

 人が自らの心の中に他者への偏見や無知や差別観、そして不信や疑いを抱(いだ)かさないようにしていくことこそが、人間同士の争いを防ぐ『不落の平和の砦である』との考えが、UNESCOの平和への理念であります。

 

 さらに、憲章では、無知と偏見を取り除くため、文化の普及と教育の必要性を強調しています。

 

 また、ユネスコの憲章には、
 「政府の政治的および経済的取極(とりきめ)のみに基づく平和は、世界の諸人民の、一致した、しかも永続する誠実な支持を確保できる平和ではない。よって平和は、失われないためには、人類の知的及び精神的連帯の上に築けなければならない」と述べています。

 

 「戦争や紛争の原因を取り除くための鍵は私たち一人ひとりの『人間』であり、「全ての人びとが知性と道義で結ばれてこそ平和は保たれるのだ」とするUNESCOの考え方は、武力や条約による平和とは異なり、人種や国家を超えた人間一人ひとりへの信頼と期待に貫かれています。

 

 したがって、UNESCOは、加盟国政府で構成される「政府間組織」ですが、UNESCOの目的であり世界の平和を実現するためには、それぞれの国の政府だけでなく、市民も参画し、知的および精神的に連帯が築かれることが不可欠であると指摘しています。 

 

 

  

Ⅱ 民間ユネスコ協会の設立  

 

 

「政府間での平和構築の努力とともに、『心の中に平和のとりで』を築いた世界中の人々の知的・精神的連帯の上に、本当の平和が実現する」とのユネスコの理念に当時の多くの人が感銘をうけました。 その理念を社会に広め、平和の実現に取り組んでいた人々により、敗戦の荒廃と混乱の中にあった昭和22年(1947年)7月19日に世界で最初の民間のユネスコ協会が、仙台に設立されました。   
 
 昭和23年(1948年)5月1日には、国内の民間ユネスコ運動の連合体である日本ユネスコ協会連盟(日本ユネスコ協会連盟の前身)が結成され、その後、急激に発展し、現在では、構成団体会員約280をメンバーとして、活発な活動を展開しています。
 
 日本政府は昭和26年(1951年)に60番目の加盟国としてUNESCOへの加盟が認められました。文科省の中の国内委員会が事務を担当しています。

 

ユネスコが誕生して70年が立とうとしています。しかし、未曾有の死亡者・戦禍を人類に与えた第二次世界大戦後も、数多くの戦争・紛争がおこりました。「21世紀は、戦争の20世紀から平和の世紀へ」と多くの人々の願いもむなしく、今世紀に入った後も、世界の様々な場所でおこるテロ事件など、憎しみと暴力の連鎖はますます深刻となっています。

また、貧困や飢餓や様々な人権抑圧、環境破壊など必ずしも戦争にならなくても世界の多くの人々の尊厳や基本的な人権が損なわれている「平和といえない」状況が続いています。
 このような状況を打開するために、我々は原点に立ち返り、先人の思いをしっかりと受け止め、一人ひとりのこころに平和の砦を築くことを基本に世界平和を実現するための活動を力強く、展開することが強く求められております。

  

 

 

Ⅲ 鹿児島ユネスコ協会の設立と主な活動
  

 

 鹿児島ユネスコ協会はユネスコ憲章の理念に基づき、心の中に平和のとりでを築くとともに、教育、科学、文化を通じて「国際理解・国際交流」を深め、「世界平和と人類の福祉」と地域社会の豊かな発展に貢献することを目的にして、昭和48年(1973年)に設立されました。
 
 鹿児島ユネスコ協会が現在取り組んでいる平和活動の中で、ユネスコ世界寺小屋運動、ユネスコ出前授業と平和の鐘を鳴らそう運動について紹介いたします。

 

 
1. ユネスコ世界寺子屋運動
 
 ユネスコ憲章で触れましたように、戦争を防止し、世界の平和を築くためには、「教育」が不可欠です。
しかし今でも、世界には貧困や戦争などが原因で、6000万人以上の子供たちが学校に通えない、そして学校に通えなかった大人が7億人以上いる状況です。学校に通えなかったため、読み書きできない大人(非識字者)は、安定した仕事に就けず、収入は低く、苦しい生活から抜け出せず、その結果、子供にも教育をうけさせられないという悪循環(貧困のサイクル)が生まれています。この「貧困のサイクル」を断ち切るために、日本ユネスコ協会連盟は1989年に世界の貧困地帯で「学びの場=寺子屋」をつくり、人材育成によって自立した持続可能な社会づくりの応援を開始しています。「書き損じはがき」や「募金」などで集めた資金を基に、既に、43ヵ国で寺子屋を建て、約128万人以上が学んでいます。
 
 平成29年度(2017年度実施)は、アフガニスタンでは16軒目となるミルバチャコット寺子屋が建設され、識字クラスでは608人が、職業訓練クラスでは377人が学ぶことができました。
カンボジアでは、新たに17軒目となるスラエン・スピアン寺子屋が完成しました。また、識字クラスでは493人、復学支援クラスと収入向上クラスではそれぞれ218人と290人(世帯)が参加しました。ネパールでは、地震の被害を受けたビムシュワール寺子屋とドゥワンコット寺子屋の2軒が完成したほか、識字クラスと小学校クラスで、1951人と371人がそれぞれ学びました。2017年度から事業が始まったミャンマーでは、小中学校を途中退学した10歳から17歳までの480人の青少年が「継続教育」として、識字、算数、保健衛生などを9カ月間学びました。
 
 鹿児島ユネスコ協会でも、早くからこの運動に参加してきました。
平成30年度(2018年度実施)は、書き損じハガキの回収には、県下の小中高校、地方自治体、企業、前年度協力者などに2215通のご提供依頼文を送付し、報道機関には、広報、取材、報道を依頼しました。その結果、全国のユネスコ協会の中でトップとなった昨年度を上回る66837枚が今年提供されました。ご提供いただきました書き損じハガキは、平成31(2019)年3月12日に55名(48名のボランティアが参加)により仕分けされ、郵便局で切手に交換した後、日本ユネスコ協会連盟事務局ヘ送付いたしました。事務局では、企業等に依頼して切手を現金で買い取ってもらい、それを財源として世界寺子屋運動を実施されました。
  
 
2 ユネスコ出前授業
 
 心の中に平和のとりでを築くユネスコ活動にとって、幼少時代から自分たちの日々の生活が地球上の多くの人々や自然とのつながりの中で存在することを知り、相手の立場に立って考える力をはぐくむことは大変重要です。
 
 小中高校の子供たちに、ユネスコの理念や持続可能な社会について分かり易く説明し、未来において活躍をする人材を養成することを目的として、平成30(2018)年度は、4校(延べ5校)の小学校でユネスコ出前授業を実施しました(受講者は約690名)。

 鹿児島大学においても、鹿児島ユネスコ協会会員により5回の講義が実施され、受講した約675名の学生には、「世界の平和と人類の福祉」について真剣に考える機会となりました。
 
   
3 平和の鐘を鳴らそう運動
 
 鹿児島ユネスコ協会は、「平和の文化」の実践活動として、平和の鐘を鳴らそう運動を実施してきました。
お年寄り、若者、子供たちが平和の大切さを語り、平和について考えるきっかけづくりの場であります。
 
 令和元(2019)年度は、平和を求める宗教者の方々と共催で、7月19日に西本願寺鹿児島別院にて、8月4日に日本基督教団鹿児島加治屋町教会にて、8月6日に探勝園にて、8月15日に鹿児島カテドラル・ザビエル教会にて実施予定です。 
 

 

 
Ⅳ 日本ユネスコ協会連盟の新しい「ビジョン」と「ミッション」
 
   
 日本で生まれた民間ユネスコ運動は2017年に70周年を迎えました。
日本ユネスコ協会連盟では、節目にあたり、先達が培ってきた民間ユネスコ運動を振り返り、UNESCO憲章の意味を改めて自らに問い、新たなビジョンとミッション(2017年-2026年)を策定しました。
 
   
『ビジョン(指針と展望)』
 
  1.Peace for Tomorrow
 
  2.広げよう平和の心
   
 
『ミッション(使命と責務)』
 
 1.平和な世界の実現
 すべての命を尊び、多様性の尊重と国際理解の深化をはかり、紛争のない世界、核兵器のない世界を希求し、草の根から積極的に「平和の文化」の構築をすすめます。


 2.持続可能な社会の実現のための教育の実践
 基礎教育の充実と、世界が抱えるさまざまな課題にむきあうための教育=ESDの推進を通じて、次世代育成につとめます。

 


 日本ユネスコ協会連盟はこの使命と責務をはたすために、日常のなかで、次の五つを守ることが大切であると考えています。

 

1.戦争は人の心の中で始まるものであるから、争いを力で解決しようとする考えを捨て、すべての人の心の中に平和を守ろうとする決意をもたなければならない。

 

2.人間の尊厳と平等を重んじ、相互に尊重し合うという民主主義の原則にたって、自由と人権を尊重する習慣を日常生活においても守り育てることが大切である。


3.教育・科学・文化は、人々の幸せと豊かな生活を支えるものであるから、その向上と普及に努めなければならない。


4.争いをなくし、真の平和を永続させるためには、お互いの生活と風俗、習慣を知り合い、民族間の疑惑と不信を除くことが必要である。


5.世界の繁栄と人類の福祉を増進するためには、お互いに友愛と信頼のきずなで結ばれ、人類みな兄弟という心構えで助け合い、共存共栄の道を進むべきである。
 
 
 鹿児島ユネスコ協会は自己と異なるものを受け入れる寛容の精神、他者を認め他者から学ぶ謙虚さ、そして小さいこの地球で生きていくための共生の精神の涵養など、平和の文化が構築され、人間の尊厳が重視される多文化が共生する平和な社会が実現できますよう、尽力いたす覚悟であります。

 

 

どうか皆様方より引き続き鹿児島ユネスコ協会へのご理解、ご指導とご鞭撻およびご協力とご参加を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

 

 

 

 

 

 

 

鹿児島ユネスコ協会

 

鹿児島県鹿児島市鴨池新町10-1

鹿児島県文化スポーツ局

文化振興課内

 

TEL 099-286-2111