会長ごあいさつ                  吉田 浩己

 

 

平成276月より、会長を務めております吉田です。皆様にご挨拶申し上げます。

 

今後、どうぞよろしくお願いいたします。

 

 

 

Ⅰ 憎しみと暴力の連鎖

 

 

 

未曾有の死亡者・戦禍を人類に与えた第二次世界大戦(鹿児島市では、昭和20年6月17日の空襲により、死者2,316名、負傷者3,500余名の犠牲と罹災戸数11,649戸、罹災者66,134名の大きな被害を受けた)後も、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争など多くの戦争・紛争がおこりました。「21世紀は、戦争の20世紀から平和の世紀へ」と多くの人々の願いもむなしく、今世紀に入った後も、イスラエルとパレスチアの紛争、2001年9月11日におこった米国での同時多発テロとそれに続くアフガニスタンへの軍事行動、イラク攻撃、シリアの内紛、ISへの有志連合の攻撃、被災者のヨーロッパへの避難、フランス、アメリカ、トルコ、アフガニスタンなど、世界の様々な場所でおこるテロ事件など、憎しみと暴力の連鎖はますます深刻となっています。    

 

また、UNESCO創設から70年を経た今でも貧困や飢餓や様々な人権抑圧、環境破壊など必ずしも戦争にならなくても世界の多くの人々の尊厳や基本的な人権が損なわれている「平和といえない」状況が続いています。

 

二度と戦争を繰り返さない世界、人々の尊厳と基本人権が尊重されている平和な世界の実現めざして活動している民間ユネスコとしては、極めて残念な状況にあります。このような状況を打開するために、我々は原点に立ち返り、先人の思いをしっかりと受け止め、平和活動を力強く、展開することが強く求められていると認識しています。ここに、改めてUNESCOの基本理念と活動を紹介いたします。

 

 

 

Ⅱ UNESCOの誕生と基本理念

 

 

 

UNESCO(ユネスコ・国際連合教育科学文化機関:United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization)は、教育、科学および文化の分野での国際協力を進めることにより、諸国民の間に知的・精神的連帯を強め、真に永続的な世界平和を実現することを目指している機関です。

 

UNESCO誕生の最大の要因は。未曾有の大戦争であった第二次世界大戦がもたらした無数の犠牲と悲劇でした。二度と戦争を起こさないと平和を願う各国代表がロンドンに集まり、「戦争はなぜおこったのか」「世界平和は実現できるか」を真剣に検討し、合意された理念を1945年の11月にユネスコ憲章としてまとめ、1946年11月に各国がこの憲章を批准し、ユネスコが誕生いたしました。

 

ユネスコ憲章では、

 

「相互の風習と生活を知らないことが、人類の歴史をつうじて世界の諸人民の間に疑惑と不信をおこした共通の原因であり、この疑惑と不信のために、諸人民の不一致があまりにもしばしば戦争となった。」「特に言語に絶する悲哀を人類に与えた第二次世界大戦は、人間の尊厳、平等、相互の尊重という民主主義の原理を否認し、これらの原理の代わりに、無知と偏見を通じて人間と人種の不平等という教義をひろめることによって可能にされた戦争であった」と明記し、相互の無知と偏見による「疑惑と不信」が戦争を起こしてきたのであると分析しています。

 

この分析を踏まえて、

 

ユネスコ憲章の冒頭で、

 

「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に『平和のとりで』を築かなければならない。」と宣言しています。

 

人が自らの心の中に他者への偏見や無知や差別観、そして不信や疑いを抱かないようにしていくことこそが、人間同士の争いを防ぐ『平和のとりで』であるとの考えが、UNESCOの基本理念であります。

 

確固たる『平和のとりで』は平和に暮らすことを阻むあらゆる状況に無知であったり無関心を装ったりすることなく、国籍や人種という枠をこえて、相手の痛みを自分の痛みとして受け止めることができる心で、具体的な平和の課題に幾度も取り組む中で、心の中に築かれるのではないでしょうか。

 

さらに、憲章では、「文化の広い普及と正義、自由、平和のための人類の教育とは、人間の尊厳に欠くことができないものであり、且つ全ての国民が相互の援助および相互の関心の精神をもって果たさなければならない神聖な義務である」と述べ、文化の普及と教育は戦争を防止するために我々が必ず取り組まなければならない責務であると指摘しています。

 

また、ユネスコの憲章には、

 

「政府の政治的および経済的取極のみに基づく平和は、世界の諸人民の、一致した、しかも永続する誠実な支持を確保できる平和ではない。よって平和は、失われないためには、人類の知的及び精神的連帯の上に築かれなければならない」と述べ、加盟国政府で構成される「政府間組織」であるUNESCOはその目的を達成するためには、それぞれの国の政府だけでなく、市民も参画し、知的および精神的に連帯が築かれることが不可欠であると指摘しています。 

 

 

 

Ⅲ 民間ユネスコ協会の設立

 

 

 

「政府間での平和構築の努力とともに、「心の中に平和のとりで」を築いた世界中の人々の知的・精神的連帯の上に、本当の平和が実現する」とのユネスコの理念に多くの人が感銘をうけました。 その理念を社会に広め、平和の実現に取り組んでいた人々により、敗戦の荒廃と混乱の中にあった昭和22年(1947年)719日に世界で最初の民間のユネスコ協会が、仙台に設立されました。   

 

昭和23年(1948年)51日には、国内の民間ユネスコ運動の連合体である日本ユネスコ協会連盟(日本ユネスコ協会連盟の前身)が結成され、その後、急激に発展し、現在では、構成団体会員約280を中心メンバーとして、活発な民間ユネスコ活動を展開しています。

 

日本政府は昭和26年(1951年)に60番目の加盟国としてUNESCOへの加盟が認められました。文科省の中の国内委員会が事務を担当しています。

 

 

 

Ⅳ 鹿児島ユネスコ協会の設立と主な活動

 

 

 

鹿児島ユネスコ協会はユネスコ憲章の理念に基づき、心の中に平和のとりでを築くとともに、教育、科学、文化を通じて「国際理解・国際交流」を深め、「世界平和と人類の福祉」と地域社会の豊かな発展に貢献することを目的にして、昭和48年(1973年)に設立されました。

 

鹿児島ユネスコ協会が現在取り組んでいる平和活動の中で、ユネスコ世界寺小屋運動、ユネスコ出前授業と平和の鐘を鳴らそう運動について紹介いたします。

 

  1. ユネスコ世界寺子屋運動

 

ユネスコ憲章で触れましたように、戦争を防止し、世界の平和を築くためには、「教育」が不可欠です。しかし今でも、世界には貧困や戦争などが原因で、6000万人以上の子供たちが学校に通えない、そして学校に通えなかった大人が7億人以上いる状況です。学校に通えなかったため、読み書きできない大人(非識字者)は、安定した仕事に就けず、収入は低く、苦しい生活から抜け出せず、その結果、子供にも教育をうけさせられないという悪循環(貧困のサイクル)が生まれています。この「貧困のサイクル」を断ち切るために、日本ユネスコ協会連盟は1989年に世界の貧困地帯で「学びの場=寺子屋」をつくり、人材育成によって自立した持続可能な社会づくりの応援を開始しています。「書き損じはがき」や「募金」などで集めた資金を基に、既に、43ヵ国で寺子屋を建て、約128万人以上が学んでいます。

 

平成27年度(2015年度)は、カンボジア、アフガニスタン、ネパールにて、識字教育、収入向上プログラム、復学クラスに力を注ぎ、識字クラスだけでも3231人が修了しています。ネパールで平成27年4月に発生した震災に際しても、カトマンズ周辺の寺子屋で仮設住宅の支援や衣料品の支援のほか、貧困世帯に効果的な支援(奨学金や職業支援など)を行っています。

 

鹿児島ユネスコ協会でも、早くからこの運動に参加してきました。平成27(2015)年度は、書き損じハガキの回収には、県下の小中高校、地方自治体、企業、前年度協力者などに1715通のご提供依頼文を送付し、報道機関には、広報、取材、報道を依頼しました。その結果、全国のユネスコ協会の中でトップとなった昨年度とほぼ同数の61151枚が今年度も提供されました。ご提供いただきました書き損じハガキは、平成28(2016)年39日に35名(28名のボランティアが参加)により仕分けされ、郵便局で切手に交換した後、日本ユネスコ協会連盟事務局ヘ送付いたしました。事務局では、企業等に依頼して切手を現金で買い取ってもらい、それを財源として世界寺子屋運動を実施されました。

 

また、鹿児島ユネスコ協会青年部は東日本大震災の被災地の子供たちが進学や夢をあきらめることなく、明日へと歩いていくために、ユネスコ協会就学支援奨学金のための募金活動をボナンティアの学生ともに行い、募金を日本ユネスコ協会連盟に送りました。

 

 

 

2 ユネスコ出前授業

 

心の中に平和のとりでを築くユネスコ活動にとって、幼少時代から自分たちの日々の生活が地球上の多くの人々や自然とのつながりの中で存在することを知り、相手の立場に立って考える力をはぐくむことは大変重要です。

 

小中高校の子供たちに、ユネスコの理念や持続可能な社会について分かり易く説明し、未来において活躍をする人材を養成することを目的として、平成27(2015)年度は、2校(延べ3校)の小学校でユネスコ出前授業を実施しました(受講者は約175名)。鹿児島大学においても、鹿児島ユネスコ協会会員により8回の講義が実施され、受講した約300名の学生には、「世界の平和と人類の福祉」について真剣に考える機会となりました。

 

 

 

3 平和の鐘を鳴らそう運動

 

鹿児島ユネスコ協会は、「平和の文化」の実践活動として、平和の鐘を鳴らそう運動を実施してきました。お年寄り、若者、子供たちが平和の大切さを語り、平和について考えるきっかけづくりの場であります。

 

平成27(2015)年度は、世界で最初の民間ユネスコ協会が誕生した記念日(7月19日)に鹿児島市中央公園にて、初めて開催いたしました。

 

さらに、平和を求める宗教者の方々と共催で、7月19日に西本願寺鹿児島別院にて、8月2日に日本基督教団鹿児島加治屋町教会にて、8月15日に鹿児島カテドラル・ザビエル教会にて実施し、約350名の方が参加されました。

 

 

 

 

 

Ⅴ 新しい「ビジョン」と「ミッション」

 

 

 

日本で生まれた民間ユネスコ運動は2017年に70周年を迎えます。日本ユネスコ協会連盟では、節目にあたり、先達が培ってきた民間ユネスコ運動を振り返り、UNESCO憲章の意味を改めて自らに問い、新たなビジョンとミッション(2017年-2026年)を策定しました。

 

 

 

『ビジョン(指針と展望)』

 

   Peace for Tomorrow

 

広げよう平和の心

 

 

 

『ミッション(使命と責務)』

 

  1. 平和な世界の実現

    すべての命を尊び、多様性の尊重と国際理解の深化をはかり、紛争のない世界、核兵器のない世界を希求し、草の根から積極的に「平和の文化」の構築をすすめます。

  2. 持続可能な社会の実現のための教育の実践

    基礎教育の充実と、世界が抱えるさまざまな課題にむきあうための教育=ESDの推進を通じて、次世代育成につとめます。

 

 

 

鹿児島ユネスコ協会は、ユネスコ世界寺子屋運動、ユネスコ出前授業、平和の鐘を鳴らそう運動等を一層促進するとともに、今後、新たなミッションの実現に新たに取り組む決意であります。

 

世界の一人ひとりが心の中に平和の砦を築き、知的および精神的に連帯することにより、憎しみと暴力を断ち切り、紛争とテロを中止させ、さらに自己と異なるものを受け入れる寛容の精神、他者を認め他者から学ぶ謙虚さ、そして小さいこの地球で共に生きるための共生の精神の涵養などの「平和の文化」が構築され、人間の尊厳が重視される多文化社会が少しでも早く実現できますよう、尽力いたす覚悟であります。

 

どうか皆様方より引き続き鹿児島ユネスコ協会へのご理解、ご指導とご鞭撻およびご協力とご参加を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

 

 

 

 

 

 

 

鹿児島ユネスコ協会

 

鹿児島県鹿児島市鴨池新町10-1

鹿児島県県民生活局

生活・文化課内

 

TEL 099-286-2111